教員は定額働かせ放題のやりがい搾取
なり手不足で採用倍率2倍以下
未来も危うい厳しい職業やで。
毎日のように起こる教職員の不祥事のニュースを含め、「学校の先生」という職業に対して世間のイメージは決してよくないと思います。
モンペや反抗的な児童・生徒、実際に現場で働きながら「世間のイメージほど・・・」という側面ももちろんあれば、「その通り!やばい職業やで」と思う部分もあります。
そんな状況を打開すべく文科省は
「働き方に関わる緊急提言」を出しています。
2023年8月28日に文部科学相の諮問機関、中央教育審議会の特別部会は、学校の働き方改革などについて、緊急提言を出しました。
これを受けて、文部科学省は8月29日に大臣メッセージを発表するとともに、9月8日に取り組みの徹底を求める通知を全国の教育委員会等に発出しています。
教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言):文部科学省 (mext.go.jp)
具体的な内容をまずは1番からできるだけ短く簡単に整理してみよう。
※提言文書を読みながら、個人的に必要だと思う部分を抜粋しています。本来の文科省の意図と外れている場合があるのでご了承ください。詳しく気になる部分があれば、上記のリンクからPDFファイルで確認してください。
緊急提言①学校・教師が担う業務の適正化の一層の推進
学校・教師が担う業務の適正化の一層の推進
「学校・教師が担う業務に係る3分類」について適正な役割分担を進めていくこと。ここでいう3分類は以下のものである。
1.「学校以外が担うべき業務」
(例)・登下校 ・補導時の対応
2.「学校の業務だが、教師が担う必要のないもの」
(例)・校内清掃 ・部活動 ・休み時間の対応
3.「教師の業務だが、負担を軽減すべきもの」
(例)・給食対応 ・授業準備 ・成績処理
などが挙げられている。この3つを明確に区別し対応策を考えようということのようだ。
各学校における授業時数や学校行事の在り方の見直し
学校において定めらている年間授業の時間数を、どの学校も当然クリアしている。しかし、大幅に超えている学校もあり、授業時間数について検討する必要がある。
学校行事である「運動会」「入学式」「卒業式」における慣例的・形式的な部分は簡素化し、時間を短縮していくこともできる。
ICT の活用による校務効率化の推進
全国的に導入されているICT機器を更に有効活用する。授業準備や成績処理にICT機器が適切に用いられているかは全国的にばらつきがあるので、統一していく。また、保護者との連絡手段などとしても用いていく。
緊急提言②学校における働き方改革の実効性の向上等
地域、保護者、首長部局等との連携協働
教員と保護者、地域は「次代を担う生徒の育成」という共通の目標のもと協力していくことが必要である。
保護者からの過剰な要求や苦情や個人で対応してはいけない。学校組織で対応する、もしくは教育委員会とも連携していく。
健康及び福祉の確保の徹底
教師の健康、及び福祉の確保を行う。具体的には、
- 教職員の勤務時間が上限を超過するような場合は教育委員会による学校業務の検証や見直し、取組の改善を行う。
- 勤務時間の途中に休憩時間を確保できるようにする。
- 精神疾患による長期療養者が過去最高となっている。個別の要因を分析し、対策を講じる。
学校における取組状況の「見える化」に向けた基盤づくり
タイムカードを用いて勤務時間を管理・把握する。国において勤務時間の把握方法を周知・徹底する。教育委員会及び学校は勤務時間について客観的に把握する必要。
緊急提言③持続可能な勤務環境整備等の支援の充実
教職員定数の改善
「小学校高学年における教科担任制」を段階的に進めていくことで、教師の持ちコマ数を減らすと同時に、児童に専門的な授業が受けられるようにする。
支援スタッフの配置充実
「教員業務支援員」の配置と拡大を行っていく。「教員業務支援員」とは教師が教師でなければできない業務に集中するために、学習プリントの準備や来客、電話対応をサポートする者のことである。
急増する不登校生徒対応するため、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの先生を配置を拡大する。
部活指導員の配置充実を図る。
処遇改善
「給特法」など法的な枠組みを含め抜本的に見直しを行う。主任手当や管理職手当について速やかに改善を図る。
教師のなり手の確保
上記を含め、一体的に環境整備をする必要がある。国において教員のなり手を発掘するため教育委員会と大学、民間企業との連携によって、魅力の発信や入植希望者とのマッチングを行う。
現在、働きながら効果を感じているもの、恩恵を授かっているもの。
効果を実感しているもの
たくさんあります。
文章をまとめながらなるほど!と思ったものもたくさんあったので、ここからは働きながら感じた事をまとめておきます。なお、具体的な事例として文科省のHPでスライドが用意されているのですが、あまりの膨大な文字数に心が折れました^^ 気になればぜひ一度見に行ってみてください。
部活動の地域移行、及び部活指導員の充実
私は今、中学校にいるのですが、部活の地域クラブ化によって「コーチ」がおり土日や放課後に部活の顧問を行わない先生もかなり増えてきています。
中体連などはさすがに顔を出しますが、こちらはだいぶ改善されてきた印象です。
小学校の教科担任制の実施
私も3年間、小学校で務めており、そのうち1年間5年生をもっていたので教科担任制のありがたみを知っています。
私の学校では、3人の担任で「図工」「音楽」「図工」など特別教科を分け合って教科担任制を行っていました。どれも専門外な教科ですが(笑)
専門外ですが効果は絶大で、考えた授業を3クラスで実施できるのでその分、授業を考える負担が減ります。特に私は音楽が苦手だったので女性の先生にもってもらえたのがありがたかったです。
また、他クラスの学級の授業を受け持つことで、その学年の児童と関係を深めたり、良く知ったりすることができました。更に成績を付ける際には、同じ教師が同じ基準で3クラスの成績をつけることができるので、これはすごく助かりました。
地域、保護者、首長部局等との連携協働
小・中学校問わず私の教員人生で保護者とのトラブルはつきものでしたし、周りで困っている先生も何人も見てきました。これには、教員が明らかに悪い場合もあれば、「防ぎようがなくない?」というものもありました。
なかなか難しいのは生徒同士のトラブルがこじれた場合です。教員が見ていない場合、何ともしようがないのですが、保護者からすれば「学校に預けているのに、どうして知らないんだ」となります。
なので、この後の迅速な聞き取りと家庭への連絡、及び謝罪が必要なのですが。こんな時にぺーぺーの私が助けられたのが管理職、生徒指導の先生方です。
基本的な教職員のトラブル連絡網は
担任→主任→生徒指導・教頭→校長
になっていると思います。が、どの先生も親身になって話を聞いてくれたり、アドバイスをくれたりします。学校としてトラブルを大きくしたくないのも当然ですが、担任としてもありがたい限りです。
学校組織として動く、学校によって差はありますが、どこも連携してやってもらえている印象があります。
健康、福祉の徹底について
地域によって差がありますが、「早く帰れ」というところもあります。とある岐阜県西濃の学校では毎週水曜日は18:30分になると強制退校させられるというルールがありました。
当時は、早く学校を追い出されても次の日の業務が増える&どうせ持ち帰りの仕事に代わるだけ・・・と思っていましたが、意外と「帰る」と心に決めると水曜日が嬉しかったり、同僚と飲む週の中休み的な日になっていました。
逆にこれは・・・と思ったのは形上の「早く帰る日」。8の付く日は早く帰ろう、なんて言っていましたがそれを意識して帰っている人を見たことがありません。そして、管理職だけ現場の先生を残して次々と退勤していくのもどうかと思います。中には若手の職員がトラブルになっているのに、早く帰ってしまう管理職の方もいます。
正直、もう少し何とかしてほしいポイント
これはただの不満かもしれません。しかし、教員の魅力を発信するというからには、現場に残る課題点も見直してほしいという気持ちもあります。
職員定数の改善
今までに4校の学校を経験しましたが、どの学校も人手不足感は否めませんでした。教員でいえば小学校は空きコマ0、中学校は空きコマ平均1~2程度なのですが、体調不良者が出て補充に入るとなれば、空きコマは消滅します。また、管理職の先生が駆り出されてバタバタするので「休み」が使いづらいイメージがあります。
これは特に小学校で、中学校はそもそも教科担任制のため、1人2人先生が休んでも案外何とかなります。小学校で担任の先生が休むと、管理職や同じ学年の先生がすごくバタバタします。
上記にあった「業務支援員」のようなフリーで動ける先生がいてくれればありがたい限りです。
処遇改善
よくよく噂にあがる「定額働かせ放題」についてです。これはよく言ったもので定時に帰っても夜11時まで学校で勤務しても給料は変わりません。
なぜかというと、教員の給料は、「残業代」の数%が既に給料に上乗せしてあるためです。では、その給料は満足なものかといと若手であれば月々20万前後、ボーナス40~50万程でしょうか。
お金で考えてしまうとどうしても部活などで、休日にも出勤、仕事に関わることが馬鹿らしくなってします。せっかくやりがいのある素敵な職業なのだから、遥か過去に作られた法制度にとらわれて教員不足を招くなんて事態は避けたいものです。
この給特法が作られた時期の教員の働き方と、今の教員の働き方は当然全く違うのですから、時代に合わせて変わっていくことが求められています。今しかない!
まとめ
教員の世界の未来は明るいのかな?
働きながら不安に思うことがたくさんあります。私は地元で働いているのですが、明らかに数年前より人口が減り、スポーツなどでも人やチーム数が減っています。
学校の統廃合が進められて、大きな学校ができる。学校が減った分、人員は削減されるが、学校が大きくなった分、その学校の先生は大変であるし、根本的な解決になってはいない。
そして、人口の減少が叫ばれ、実際にそれを肌で感じるのに増えていく業務。些細なことにしても、教員が不祥事を起こした時のいい訳かのような「不祥事チェックシート」や精神疾患に対応した「ストレスチェックシート」。
世間の目ばかりが厳しくなり、書類が増えて、仕事が忙しくなり本来一番大切にすべき目の前の「児童・生徒」に手をかける時間が少なくなる。
不祥事や教員の忙しさばかりがピックアップされて、教員のなり手不足や離職率が上がり、現場の先生は更に仕事が増える。
そんな悪循環が起こっているように思います。今回の「緊急提言」を読んでいるとその悪循環を断ち切ろうとする動きも見て取れました。
改革の目指すべき方向性は、教師のこれまでの働き方を見直し、子供たちに対してより良い教育を行うことができるようにすること。教師が教職生涯を通じて新しい知識・技能等を学び続け、質の高い教職員集団を実現していくことは、我が国の学校教育の充実にとって極めて重要
教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策
(提言)文科省
現場で訴えられている事を上の方々は承知の上でしょう。いつまでに、どれだけ改革を行っていけるかが勝負どころだと思います。教員がいつでも余裕をもって、そして子どもたちもそんな教員を目指す、そんな理想にたどり着きたいです。
どの仕事にだって苦労はある、それは教員とて例外でないのも分かります。が、何といっても教員は「児童・生徒」の手本ですから。その教員が「仕事辛い」なんて言っていたら・・・。
「緊急提言」というからには、具体的な改革が行われていくことを期待しています。8月28日に出されたのを今日(9月24日執筆時)まで知りませんでしたが(笑)
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